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凌辱小説「夏の思い出 前編」



白いワンピース姿の少女が駅のホームに降り立った。後ろに続くのは少女より背丈の小さな半そでの少年。
真夏の日差しがジリジリと照りつける駅のプラットフォーム。
たった二人の乗客だったこの姉弟を降ろした列車は重々しい音をたてて、発車する。
都会では見られない重量感のあるデザインの客車は鉄の音色を響かせながら、田園の真ん中を走るレールの向こうへと陽炎で滲みながら姿を小さくしていった。





プラットフォームの上でじっとりと汗を滲ませた少女はおでこに手を当てて辺りを見回した。
木造のごく簡素な作りの駅舎と、見渡す限りの田園が広がっていた。
改札口のようなものはあるが切符を切る人員すら配置されていない無人駅である。
駅舎の他に目立った建物はなく、遠くにかすかにぽつんと見える民家の瓦屋根が陽光をキラキラとはじいているのが確認できるばかり。
夏真っ盛りの強い日差しで青く透き通った空の向こうには山々が切り絵のよう貼り付いている。
蝉の鳴き声がけたたましく、無人の駅のホームまで鳴り響いていた。
「おじいちゃん迎えに来てくれてるはずなんだけどなぁ」
クーラーの効いていない鉄道で揺られていたせいか汗が額に浮いている。
「お姉ちゃん、お腹すいた」
退屈してた弟は不満顔だ。

姉の清水彩香は中学にあがったばかりの女の子。顔立ちはかわいいというより美人と表現してもいいぐらい大人びていて、その容姿のせいか人によく頼られる。
弟の譲は三つ年下で姉によくなついていて、優しい彼女の弟であることが誇らしくも思っていた。
そんな姉弟が夏休みに田舎の祖父母の家に遊びに行くことになった。
いつもなら両親に連れられてここまで来る道のりだったが、彩香は中学にあがって少し親に頼らず自分たちで電車に乗りついで来たいという冒険心もあったのだろう。忙しい両親の事情もあり、子どもだけでの里帰りという話になった。
祖父母の住むこの町は田舎で単線の鉄道駅がポツンとたたずむその周りはほとんど田んぼが広がるばかり。バスも一日に一本出ているか祝日には完全にダイヤが運休する体たらくである。
そのため祖父が軽トラックを出して迎えに来てくれる予定だったのだが。
「おじいちゃんに電話してみようか」
「うん……」
彩香は疲れた顔をしている譲に声をかける。
駅舎の外に出ると駅前のロータリーには黒いワゴンが一台止まっているのみだ。
「あれおじいちゃんの車かな?」
真っ先に気づいた譲が指差して姉のスカートの裾を引っ張った。
「違うと思うよ」
黒いスモークガラスで中の様子は分からないが、黒いワゴンの趣味を考えると祖父の車には思えなかった。
それに車からは若者好みの音楽のビートが漏れていて、演歌好きの祖父の趣味からも程遠い。
「おじいちゃん、僕たちが今日来るって忘れちゃったんじゃない?」
「あはは、もしかしたらそうかもね」
彩香はおどけた声に苦笑しつつ、疲れているであろう弟を古ぼけたベンチに座らせ、カバンから携帯を取り出した。
しかし、画面に映し出されたのは無情にも圏外という表示。
電話の機能を果たしてくれない携帯をカバンにしまいこみ、彩香は駅に電話が備え付けられていないか見回した。

黒いワゴンの中、狭い車内はタバコの煙で充満していてカーステレオからはヒップホップが鳴り響いていた。
「今日も暇っすね」
「たりぃなー」
この田舎町では娯楽は何もない。もてあました時間を怠惰に過ごす若者たちだ。
金髪や茶髪に染めていてピアスで顔を装飾したり、半そでから覗く悪趣味な刺青から漂うのは、彼らの素行の悪さの一端。
タバコの吸殻と缶ビールの空き缶でパンパンに膨れたゴミ袋は、彼らの暇をもてあましている光景そのものだ。
「おい、あれ見ろ」
窓の外に目をやった鼻ピアスの男の声に全員が顔をあげた。
スモークガラスの向こう、駅舎から降り立ったのは白いワンピースの清楚な少女。
この田舎で年頃の女の姿を見かけること自体が久しぶりで、男たちはみんな興奮したように身を乗り出した。
白いワンピースの柔らかな生地を浮き立たせる身体つきは華奢でそれほど胸も膨らんでいないように見えるが、胸にかけている小さなカバンの肩掛けのバンドで持ち上げられて膨らみが強調されていた。
男たちの目線はどうしても強調されながらも小ぶりな様子の胸に集まってしまう。
すらりとした脚や半そでから延びた腕はワンピースに負けないぐらい透き通った色白。
目鼻立ちは人形のようにかわいらしいが、弟らしき男の子に向ける視線はどこか大人びていて母性を感じさせる。
「上玉だぜぇー。かなりかわいいじゃん」
そして、彼女が車に対して背中を向けたときに白いワンピースに透けて見える純白のパンティのラインが確認できると男たちは目を輝かせた。
「ガキが邪魔だけど女かなりイケてるじゃん! はぁはぁ……」
生身の女を視認すること自体が珍しい彼らの興奮はその時点で一気に高潮していった。
それだけ彩香の容姿は男たちの目をひきつけた。
ヤリタイ……
彼らに迷う理由はなく、思い立った一つの行動は暗黙のうちに決まっていた。
まして下着のラインが透ける白いワンピースの頼りなさは、男たちの欲情を刺激するツールでしかない。
「拉致るぜ」
リーダー格のモヒカンは車のドアを開けて降り立つと、他の男たちもニヤニヤして目配せした。
いわゆる女狩りは彼らの娯楽の一つだったが、狩りの対象がこんな田舎に来るのは極めてまれの出来事で、もう腹は決まっていた。

彩香は電話を探してきょろきょろと駅舎を見回していた。
昭和のまま時間が止まったような木造の駅舎の壁には、とっくに終わった古い映画のポスターや、数年前の町内会の張り紙が風化して張り付いているばかり。
電話ボックスの名残はあったが、その壁の一角は日焼けしていない床と引きちぎられた電話線の痕跡があるだけだった。
「電話なら誰も使わないんでずいぶん前に撤去されたみたいだよ」
「え?」
不意に声を後ろからかけられて彩香は振り向くと、入り口に金髪の男が立っていた。
「そうなんですか」
「ああ。君たちは旅行? 俺ら地元だからよければ案内してやるよ?」
「あの……祖父が車で迎えに来てくれる予定なので」
彩香は金髪の男のニヤついた顔に不穏なものを感じ取って、そうはぐらかした。
頼るべきか迷ったが、男の滲み出す気味悪さを感じると不安のが大きかった。
「誰も来ないじゃん」
金髪もまた彩香の警戒した表情にむしろ興奮してしまうのをなんとか抑えて、そう言い放つ。
ロータリーに目を向けるとワゴンのドアから数人の男がたばこを咥えて出てくるのが見えた。
譲のことが心配になった彩香はベンチのほうへ慌てて足を向けると、阻むように金髪が立ちふさがった。
「まあまあ、話ぐらい聞けよ」
「あの……弟と一緒に出発すルのデ……ど、どいテ……クダサイ……」
もう不安に押しつぶされそうになった彩香の声は最後は聞き取りづらいほど小さくなっていた。
それでも弟のことが気がかりで足を踏み出すと、身体ががっしりと押さえつけられた。
「ひっ……放してくださいッ……」
男の野太い腕に押さえつけられた彩香は悲鳴に近い声をあげた。
「お姉ちゃん!」
譲も男の一人にいつの間にか押さえられていて、彩香は顔をこわばらせた。
「譲っ!」
「お姉ちゃんっ……」
譲もまた大柄の男の異様に囲まれて怯えきっていた。
彩香たちは五人の男に囲まれていた。
いずれも普通の暮らしをしているというよりは不良という表現がふさわしい連中ばかり。
「放して……クダサイ……」
震える声の彩香の姿は男たちの征服欲を大いに刺激した。
久しぶりの女に取り押さえる役を買ったリーダー格は息を弾ませて、その華奢な身体を抱きしめると、「車に乗せるぞ」と仲間に指示した。
「あっ!」
そのまま彩香の身体は乱暴に引っ張られ、両脚が引っ張られるまま靴先を地面にこすりながら車まで連れられる。
さっき見かけたスモークガラスの黒いワゴンの大きなドアに荷物でも投げ込むように押し倒され、慌てて車から出ようと起き上がった彩香はまた押し倒された。
先ほどまで吸われていたタバコの煙がうっすらと霧のようにたちこめる車内で彩香はなんとか体勢を立て直そうとシートに腕をかけて突っ張る。
「観念しろよ! こっちだ!」
車にそのまま一緒に乗り込む形でリーダー格の金髪が彩香を車の奥へ押し付けると、続いて他の男も乗り込んできた。
「うわぁっ……放してよ……」
弟の譲も後ろのドアから乗せられ、あっという間にワゴンは七人乗り込んで満杯になった。
車は駅舎から一刻も離れたかったのか、運転者がアクセルを乱暴に踏み込んで走り出した。
「帰してください!」
わけも分からず彩香は金髪に懇願するが、男はそんな声が聞こえていないかのようにニタニタしていた。
走行中の車の狭い座席で逃げ場などない彩香の身体に覆いかぶさらんばかりに、男たちが覗き込んでいた。
弟の譲だけは一列後ろで姉と同じようにおびえた顔で黙り込んで様子を伺っている。
「近くで見るとすっげぇ美人じゃん! 大当たり」
「きゃ!」
彩香に顔を寄せた男は手を伸ばして服の上から身体をまさぐってくる。
逃げようともがくが意にも介さない男の手は胸の膨らみに指を食い込ませてくる始末だ。
「いやあっ……」
強く抵抗できずされるがままの彩香……譲は後ろの座席から愛おしい姉の胸が揉まれる様子をぎょっとした表情で見ていた。
「わりと大きく育ってるぜ、へへへへ」
ヤニ臭い息を吐いて笑いながら彩香の胸を揉み回すリーダー。
人に胸を揉まれるなんて経験はもちろん初めてのこと。
「ひぃぃっ……」
その手触りの不快感に彩香は寒気がして声を引きつらせた。
「髪の毛なんかサッラサラじゃーん!」
無遠慮な手が長い髪の毛にも手を伸ばしてくる。
「俺も触りたい!」
我慢できないのか後ろの座席からかなり無理な姿勢で胸に触ってくる男もいた。
田舎暮らしで年頃の女を生で見るのすら久しぶりという彼らが我慢できるはずもなく、次々といやらしく彩香の身体つきを手で触って味わう。
運転手の男だけが「くそー」と苛立った様子で、アクセルをさらにふかして目的地へ急いでいる。
唯一の特徴である駅の前からずっと変わり映えのない田園がかなり早いスピードで流れる車窓。
運転手がアクセルを大きく踏み込んで飛ばすので車内はかなりガタガタ揺れていたが、彩香の身体に夢中な連中は誰も気に留めない。
「きゃあっ……いやっ、ひぃい!」
座席の上でもがきながらもそこに身体を押し付けられた彩香に手を伸ばせる範囲の男たちの手が殺到し、この日のために用意してきた新品のワンピースの上から触れられる。
いや、触れるなどという甘いものではなく、膨らみかけの乳房はタスキ掛けしたカバンの紐が食い込んで強調されていたので男たちの格好の餌食になっていた。
乱暴な手つきで揉まれ、ワンピースのスカートも一人の手が裾を引っ張りあげていた。
「あっ、だめですっ……やめてクダサイっ……ひぃぃっ!」





スカートを捲り上げられる気配に気づいて慌てて彩香は声をあげたが、そのまま白い太股をのぞかせ、ついに付け根までさらけ出した。
白いパンティが見えると男たちは歓声をもらした。
「見ないでくださいっ……戻してっ……うぅぅ……」
涙をこぼしながら下着を少しでも男の視界から隠そうと身をよじらせる彩香。
清楚なワンピースに透けて見えていた白いパンティを生で拝めたことで男たちはますます色めきたち、車の中の熱気が一段と増したようだ。
弟の譲も姉の下着が見える状態と男たちの歓声に戸惑ったように座席で小さくなっていた。
姉の下着姿なら実家で洗面所のドアをうっかり開けたときや、居間のくつろぐときにスカートの隙間から見えてしまったことはある。
だが欲情というより、姉を裏切るみたいで慌てて目を逸らしていた。

「ついたぞ」
車を運転する男は苛立った声で仲間たちに告げた。
見れば車は農道から少しそれた場所にある古く廃墟になったレストラン跡の駐車場に入っていく。
割れたアスファルトから草が伸び放題の駐車場。
その真ん中にぽつんとプレハブのような作りの大きな建物と、全国チェーン展開しているレストランの看板が見える。
だが、看板の意匠は剥げ落ちていたり、白いペンキで塗り重ねられ、それが土色に風化していた。
放棄されてかなりの歳月は経過しているのであろう。

車が止まるとドアが開き、彩香たちは車の外に引っ張り出された。
また抱え込まれるようにして彩香は引き立てられ、その朽ちたレストランのドアをくぐる。
かすかに砂がはりついたドアの取っ手を押し開くと、色あせた内装やまくれたカーペットの店内へ。
そこは廃墟という表現がふさわしいが、ボックス席のテーブルと綿のはみ出したソファーなど店の在りし姿は残していた。
客席の一角に彩香は五人の男たちに囲まれて連れられ、弟も続いていく。

「ここの席でいいな」
まるでそのままファミレスの席を選ぶような軽いノリのリーダーが指差した。
「そこに立ちなよ」
窓際で比較的日差しが届く明るい場所に彩香を立たせると、男たちは取り囲んだ。
「っ……」
彩香はさっきの車の中でされた仕打ちでおびえきっていて、抵抗の意思も示せずに立ち尽くしている。
ただ自分の身体を抱きしめるようにして、壁際にさらに下がって男と距離をとるのが精一杯の抵抗だった。
「お前はそこに座ってるんだ」
譲は男に脅されるままに、朽ちてボロボロの座席の一つに座った。
彼も自分の倍ぐらいの体格のよい男たちに歯向かう勇気などなく、大人しく従うしかない。
姉の怯えた姿に言いようのない恐怖だけしかなかった。

「お前、名前はなんていうんだ?」
「っ……あの……」
名前を言うのはためらわれて彩香が逡巡すると、尋ねたリーダーが怒声をあげる。
「おら! ちゃんと名乗れよ! ナメてんのか?」
「ひぃっ……あのっ……清水彩香です」
弾かれたように名乗ると男たちはニヤニヤして顔を見合わせた。
「何年生?」
「ち、中学一年です……」
「へぇぇー」
男たちは彩香の年齢に嬉しそうな顔をする。ロリコン気質のない男は少しガッカリした様子だったが、少なくとも四人はストライクゾーンだったと見えて喜色に満ちた表情で笑い合っている。
「で、お前は?」
「譲です」
「くくくく、お前らの親は一緒じゃないの?」
「お、お父さんが会社の日だから……私たちだけです……」
変に抵抗したり隠しても怒鳴られるだけだと思った彩香はもう正直に返事をしていた。
「おじいちゃん……その、祖父が駅に迎えに来る予定なんです……駅に帰してください……」
思い切って懇願してみたが、彩香の言葉が耳に入っていないかのように男たちは仲間たちと何か目配せして相談しているようだ。
やがて方針が決まったのか、リーダー格の金髪の男が彩香の前に立つと一言……
「彩香ちゃんさー。そこでスカートめくってよ」
「え?」
「さっき車の中で見せたじゃん。パンツもう一度見せてよ……」
信じられない要求に彩香は言葉を理解できずに立ち尽くした。
弟の譲もすぐ正面の席に座らされて、状況が飲み込めない様子でじっとしていた。
「で、できません……そんなことより……駅に帰してくだサイ」
勇気を振り絞ってリーダーらしき男に訴えるも、彼はニタニタ笑いながら返事もしない。
「パンツ見せてくれないなら、弟ちゃんぶん殴ったりしてもいいんだよ?」
不意に一人がヘラヘラ笑いながらポケットから金属のメリケンサックを取り出して見せた。
金属の鈍い光に譲はぎょっとした顔。
「っ……やめてください。弟には何もしないで……ください」
彩香は慌てて声をあげると、リーダーの男が本気なのか確かめるように見上げた。
「早くしろよ」
彩香の決意を後押しするリーダーの怒気の篭った声に、彩香はこくこく頷いてスカートの裾に手を伸ばした。
大の男に怒鳴り声を浴びせられるなど初めてだったので魔法にでもかかったように逆らう気力が抜けてしまった。
おずおずと男から顔を背けながらスカートをすっと引っ張り上げる。
車の中でめくられたときと違い自分からスカートを持ち上げるのはたまらなく恥ずかしい。
「っ……うぅぅ……」
電気の通っていない廃墟レストランの窓辺の日差しが、彩香の白い太股を眩しく照らしていた。
あと少し持ち上げれば下着が見えるはずだが、躊躇して譲に暴力が及ぶのだけは姉として避けたかった。
すっ……スカートの柔らかな生地が持ち上がると三角形の布地が露になる。
とうとう、男たちの見守る中で太股、そしてパンティを自分の手でさらけ出す彩香。
「おおお」と男たちはみんな見入っている。
「っ……く……」
涙をぽろりとこぼしながら顔を背け、差すような視線に耐える彩香……
自分からこういう行為をしてしまったことで頭が真っ白になった。
彩香は学校でも筋金入りの優等生だったし、男子生徒との恋愛のような経験もなかったから、なおさら、こんなハレンチな行為に対して嫌悪感しかなかった。
その一線を自分の手で越えたことがとにかく恥ずかしかった。それも弟の目の前で……
譲に目を向けると彼は慌てて姉の視線から目を逸らした。
「あの……」
もうスカートを下ろしてもいいのだろうか、と男の反応を確かめるように見回す彩香だったが、彼らはさっきよりもエキサイトしている様子だ。
その熱気にぎょっとした。
「上も脱げよ」
野次が飛び、彩香ははっとして声の方向を振り向いた。
モヒカンの軽薄そうな男が弟の譲を殴る真似を披露して彩香をせかしていた。
野次の一つならそれで終わりかと思ったがリーダー格も笑いながら「脱げ」と命じてきた。
そう、これは弟を人質にしたストリップの要求、いや、命令なのだ。
弟を大切にしてる責任感の強い彩香に逆えるだろうか。
「そのぉっ……せめて弟を席から外してください」
「だめだね」
不良に即答され、彩香は悲しそうに譲を見た。
「お姉ちゃん……」
スカートを自分の手でまくったまま固まっている姉の姿を申し訳なさそうに見つめる譲。
彼を人質にする体格のいい不良がヘラヘラしながら「早くしろ」と催促する。
「弟の前でおねえちゃんの全部を見せてやれよ。女の身体を勉強させてやろうぜ」
「ひゃはははは、いいねぇ!」
「っ……そんなの……できない……」
彩香はスカートをまくりあげた格好のまま固まっていたが、男たちの要求は止まらない。
「早く脱げ!」
「っ……分かりマシタ……」
威圧される恐怖と弟の身の心配で彩香は逆らう気力もなくした。
ひとまずスカートを放すと手を肩に回してワンピースのホックにかけた。
パツンとホックを震える指先で一つずつ外していく間も男たちの視線が突き刺さる。
今回の旅行のために先日母親とデパートで選んだばかりのお気に入りのワンピース。
初めて袖を通したときは夏休みの楽しい帰省の思い出になるだろうと疑わなかった。
その大切なワンピースはホックを失うとふわりと肩から抜けていく。
初めて晒されたうなじと肩……白いブラジャーの肩紐が見えて、男たちは口々にやじった。
「っ……助けて……ぐすっ……」
頼りなく身体にまとったワンヒースの袖に腕を通したままそこでためらう彩香。
胸元を覆う布の下にはブラジャーがあるから、これ以上さらけ出すのはためらわれた。
「これ以上はできません……」
「焦らすんじゃねーよ」
彩香の心の中など気遣う者はおらず無情な要求が飛ぶ。
「でも……」
中学に上がったばかりで多感な年頃の彼女にとって火が出るぐらい恥ずかしい。
「弟がどうなってもいいのか!?」
「ぐすんっ……は、はいっ……」
男の怒りの声音に怯えた彩香はワンピースの上布を肩から落とした。
上下が繋がっているので、そのままスカート部分もフワリと軽い音を立ててファミレスの床に広がりながら落ちた。
「ひゅううううー! いいねぇ!」
男たちの興奮が彩香を包み込んだ。
文字通りの下着だけの姿……ブラジャーとパンティだけになった彩香のほっそりとした身体のラインが男の目に入っていた。
彩香はたまらず両手で下着をかばうように交差させて覆うと、わずかに身じろぎして背中を向けた。
そのため背中のラインから、パンティに包まれたお尻の丸みまでは男たちに見られ放題だったが、胸元をなんとか視界から遮るので彩香の頭はいっぱい。
「隠すなよ」
すぐにそんなささやかな羞恥心からの抵抗も野次で無視される。
「ごめんなさいっ……」
彩香は勇気をふりしぼって手をどけた。
正面を向かされ、あますことなく下着姿を見つめられる。
「お姉ちゃん……」
譲も正面の席で姉の身体を見て呆然としていた。
「ほーら、弟くん! お姉ちゃんのパンツたっぷり見るんだよ」
譲にとって姉の下着ぐらいまでなら何度か見ているし、それを色欲の目で見たことはない。
だが、このレストランの中で男たちの見世物にされている姉の痛々しい姿に姉を気遣うのと別の気持ちが少し沸きだしていた。
緊張と羞恥心で固まったように直立してる姉の下着姿はとても眩しく見えた。
「見ないで……譲……お願いだから……」
「う、うん……」
彩香にそう言われても譲はなぜか目が逸らせなかった。


●続く……